和歌山フォトライブラリー

めはり寿司とは、塩漬けした高菜の葉でご飯を包んだ、和歌山県・熊野地方発祥の郷土料理です。 包むのは魚介類ではなくご飯で、目を見張るほど大きな口で頬張ることが名前の由来とされます。

熊野を代表する二大郷土寿司

熊野エリアを旅するなら、ぜひ味わっていただきたいのが「めはり寿司」と「さんま寿司」。どちらも古くから地元で親しまれてきた郷土料理で、熊野詣の携行食としても重宝されてきた歴史があります。山と海に恵まれた熊野ならではの食文化を、ひと口で感じられる名物です。

山の恵み「めはり寿司」

めはり寿司は、高菜の葉で包んだ素朴なおにぎりのような一品。目を見張るほど大きな口を開けて頬張ることから、その名が付いたと言われています。塩漬けにした高菜のほのかな酸味とご飯の相性が絶妙で、シンプルながら飽きのこない味わい。かつては山仕事や巡礼のお弁当として親しまれてきました。

海の恵み「さんま寿司」

一方、さんま寿司は熊野灘で獲れる秋刀魚を酢で締め、ご飯の上にのせた押し寿司。熊野地方では脂が落ちた細身のさんまを使うのが伝統で、さっぱりとした上品な味わいが特徴です。祭りやハレの日に欠かせない一品として、今も地域の食卓に根付いています。

旅の思い出に味わいたい

熊野古道歩きの合間や、観光の立ち寄りグルメとして、めはり寿司とさんま寿司はまさに熊野ならではの味覚体験。地元の飲食店や道の駅などで出会えますので、ぜひ両方味わってみてください。

二つの寿司を育んだ熊野という土地

深い山と黒潮の海がせまる地形

紀伊半島の南部に広がる熊野は、険しい紀伊山地が海のすぐ近くまで迫る土地です。山は深く、谷は急で、平野はごくわずか。一方で、海に出れば黒潮の影響を受けた熊野灘が広がっています。山で暮らす人と海で暮らす人が、同じ地域の中で隣り合って生きてきました。

この地形が、めはり寿司とさんま寿司という二つの郷土料理を生みました。山の暮らしからは、塩で漬けた野菜の葉でご飯を包む携帯食が生まれました。海の暮らしからは、獲れた魚を酢と塩で保たせる寿司が生まれました。素材は違っても、「手間をかけず、持ち運べて、傷みにくい」という点は共通しています。

米が貴重だった時代の知恵

険しい山あいの熊野では、水田に向く広い平地が限られていました。そのため、白いご飯はいつでも食べられるものではなく、特別な日のごちそうという感覚があったとも言われます。ご飯を主役にした寿司やおにぎりが、祭りや節目の食べ物として大切にされてきた背景には、そうした事情があります。

めはり寿司の大きなおにぎりも、さんま寿司の押し寿司も、「米をおいしく、満足感をもって食べる」ための工夫として見ると、味わい方が少し変わってきます。

「よみがえりの地」と食

熊野は古くから「よみがえりの地」として信仰を集めてきました。熊野三山(熊野本宮大社・熊野速玉大社・熊野那智大社)を目指す参詣道「熊野古道」は、「紀伊山地の霊場と参詣道」の一部として世界遺産に登録されています。

平安時代には上皇や貴族が、のちには武士や庶民までもが、遠い道のりを歩いて熊野を目指しました。多くの人が列をなして歩く様子は「蟻の熊野詣」と呼ばれたほどです。これだけの人が長い旅をするには、食べ物の工夫が欠かせません。熊野の郷土寿司には、旅する人を支えてきた食文化の面影が残っています。

熊野詣と「携行食」の文化

歩く旅を支えた食べ物の条件

古道を歩く旅人にとって、食べ物には次のような条件がありました。

握り飯のようなめはり寿司も、酢で締めた魚をのせたさんま寿司も、この条件によく合っています。山道や峠を越える旅の中で、ご飯と塩気と酸味は、体にも気持ちにも染みる組み合わせだったはずです。

竹の皮や葉で包むという発想

昔の旅や山仕事では、食べ物を竹の皮や植物の葉で包むのが一般的でした。葉で包むと持ち運びが楽になり、手も汚れにくくなります。さらに、葉の持つ香りや水分調整の効果も期待されていたと考えられます。

めはり寿司が高菜の葉でご飯を包んでいるのは、「葉で包んで食べる」という昔ながらの知恵が、そのまま味の一部になった例といえます。包み紙を兼ねた「食べられる包装」とも言え、現代のお弁当にはない素朴な合理性があります。

旅の途中の「ごちそう」

長旅の途中、宿場や集落で出される食事は、旅人にとって大きな楽しみでした。熊野の宿や民家では、地元の山菜や川魚、海の幸が振る舞われたといいます。その中でも、寿司は「ハレ」と「携行」の両方を担える存在でした。今、私たちが古道歩きの休憩に郷土寿司を味わうことは、当時の旅人と同じ流れの中に自分を置くことでもあります。

保存食としての知恵:塩と酢のはたらき

塩漬けの高菜が生まれた理由

山あいの冬は寒く、新鮮な野菜が手に入りにくい季節です。高菜のように葉の大きな青菜を塩で漬けておけば、長く保存でき、食卓の貴重な一品になります。この塩漬けの高菜が、めはり寿司の味の核になっています。

塩漬けにすることで、高菜には独特の風味と酸味が加わります。さらに、塩気がご飯にちょうどよいアクセントを与えます。具だくさんでなくても、高菜とご飯だけで十分に完成された味になるのは、この塩漬けの力によるところが大きいといえます。

酢で締めるという方法

海の魚は傷みやすいため、昔の人は塩や酢を使って保存性を高めました。さんま寿司の酢締めも、その延長線上にある調理法です。酢を使うことで、魚の生臭さが抑えられ、身が引き締まり、さっぱりとした味わいになります。

冷蔵技術が発達した現代では、保存の必要性は昔ほど高くありません。それでも酢締めの味が好まれ続けているのは、保存の知恵が結果として「おいしさ」にも結びついたからでしょう。

発酵食文化とのつながり

紀伊半島には、魚を米と一緒に漬け込んで自然に発酵させる「なれずし」の文化があります。さんまやさばをなれずしにする地域は、紀伊半島の各地に見られます。現在、熊野で広く親しまれているさんま寿司は、そうした熟成の寿司の系譜を意識しつつも、より手軽に食べられる押し寿司として定着したものと捉えると理解しやすいでしょう。

めはり寿司をもっと知る

高菜漬けと葉の役割

めはり寿司の主役は、何といっても高菜の葉です。大ぶりの葉は包み込むのに向いていて、しっかりとした葉脈と、漬けたことで生まれる深い緑色が特徴です。この葉が、ご飯の水分を受け止めながら、ほどよい塩気と酸味を移していきます。

食べるときは、葉もご飯と一緒に食べるのが基本です。葉の食感と香り、ご飯の甘みが合わさって、ひと口ごとに味が変わっていくのが魅力です。

名前の由来にまつわる諸説

めはり寿司の名前には、いくつかの説があります。代表的なのは、次のようなものです。

どの説も、名前の中心にあるのは「目を見張る」という表情です。このおおらかな由来が、めはり寿司の素朴で親しみやすい性格をよく表しています。由来には諸説あり、地元の人に聞くと、それぞれ少しずつ違う話が出てくることもあります。そうした違いを聞いて回るのも、旅の楽しみのひとつです。

具材とご飯のバリエーション

めはり寿司は、高菜でご飯を包むというつくりだけを守っていれば、あとは店や家庭によって実にさまざまです。

どれが正しいというものではなく、それぞれの地域や家庭の味があります。食堂や道の駅で複数の種類を見かけたら、食べ比べてみるのも面白いでしょう。

山仕事と熊野川の暮らしから生まれた弁当

熊野の山々は、古くから林業の盛んな地域でした。山で木を伐り、川を使って運び出す仕事は、朝から晩まで体を使う重労働です。そうした現場で、手軽に持ち出せて、片手で食べられるめはり寿司は、頼もしい弁当だったと考えられます。

熊野川では、かつて木材を筏に組んで川を下らせる仕事も行われていました。川の上や山の中で食べる食事には、作業の手を止める時間が短くて済むことが求められます。大きくて食べ応えのあるめはり寿司は、そうした暮らしの中から自然に育まれた形といえるでしょう。

おいしく食べるコツ

めはり寿司をおいしく味わうために、旅人が覚えておくと便利なポイントをまとめます。

さんま寿司をもっと知る

熊野灘とさんま

秋刀魚は、北の海から南へと回遊する魚です。熊野灘には、秋から冬にかけて南下してくる秋刀魚が訪れます。熊野のさんま寿司に使われる秋刀魚は、旬の盛りのふっくらしたものとは少し異なり、脂が落ちた細身のものが選ばれるのが伝統だと言われています。

脂が多すぎると、酢で締めたときに味が重くなり、寿司としてのさっぱり感が損なわれます。脂が落ちた細身の秋刀魚は、酢飯との調和がよく、上品な味わいに仕上がります。「旬の脂ののった魚がいちばんおいしい」とは限らない、というのは、郷土料理の奥深さを感じさせる話です。

押し寿司という形

さんま寿司は、酢で締めた秋刀魚を酢飯にのせ、押して形を整える「押し寿司」の一種です。にぎり寿司のように一貫ずつ握るのではなく、型や道具で押し固めてから切り分けるため、ご飯と魚がしっかりと密着します。

この作り方は、持ち運びしても形が崩れにくく、時間がたっても味がなじみやすいという利点があります。多人数分をまとめて作れるので、祭りや祝い事などの大勢が集まる場にも向いています。

地域ごとの違いを楽しむ

熊野灘に面した海沿いの町は、和歌山県から三重県にかけて広がっています。さんま寿司はそうした地域で広く親しまれてきましたが、味つけや形、使う酢の風味、秋刀魚の処理の仕方などは、地域や店によって少しずつ異なります。

こうした違いは、その土地で受け継がれてきた家庭の味が、そのまま店の味になっているからです。複数の店で食べ比べると、「熊野のさんま寿司」といっても一つの味ではないことに気づくはずです。

ハレの日の食卓に欠かせない一品

さんま寿司は、祭りや祝い事、人が集まる行事の席で出されてきた、ハレの日の食べ物です。熊野の町では、季節の節目や神社の祭礼にあわせて、各家庭で寿司を作る習慣があったと言われています。

家族や親戚が集まる日に、手間をかけて作った寿司を皆で囲む。それは単なる食事ではなく、土地の人の絆を確かめる時間でもありました。今では、店で買い求める人も増えていますが、「ハレの日の味」という位置づけは、多くの人の中に残っています。

味わい方のポイント

さんま寿司は、秋刀魚の酸味と酢飯の甘みのバランスを味わう料理です。次のような点を意識すると、より楽しめます。

二つの寿司を食べ比べる

山と海、対照的な個性

めはり寿司とさんま寿司は、並べてみるとそれぞれの個性がよくわかります。

項目めはり寿司さんま寿司
ルーツ山仕事・巡礼の携行食海辺の暮らしとハレの日の食
主役の素材高菜の葉とご飯酢締めの秋刀魚と酢飯
味の印象素朴で、ほのかな酸味と塩気さっぱりと上品、酢の風味
食べ方手に持って大きく頬張る切り分けて、ひと切れずつ味わう
向いている場面古道歩き、軽い昼食食事の主役、土産、祝いの席

食べる順番を考えてみる

二つを一度に食べる場合は、食べる順番を考えると、より味の違いが引き立ちます。一般的には、味のやさしいほうから先に、風味の強いほうを後に、とされます。めはり寿司は塩気と酸味が穏やか、さんま寿司は酢の風味が前面に出るため、まずめはり寿司、次にさんま寿司という順番はひとつの考え方です。ただし、お腹の空き具合や好みに合わせて、自由に楽しんで構いません。

食堂や定食での出会い方

熊野の食堂では、めはり寿司とさんま寿司が定食の一部として組み合わされていることもあります。汁物や小鉢と一緒にいただくと、ひとつの膳として熊野の味が味わえます。単品で食べるだけでなく、定食のスタイルで出会うのも、おすすめの楽しみ方です。

熊野古道と食:歩く人のための考え方

古道歩きの前に食事を考える

熊野古道は、石畳や杉木立を歩く旅ですが、道中に食事を取れる場所が多いとは限りません。特に山間部の古道では、歩く前に食事や携行食を準備しておくことが大切です。めはり寿司は携行しやすく、お腹にしっかりたまるため、古道歩きの昼食として昔から理にかなった食べ物です。

代表的な古道エリアの雰囲気

熊野古道にはいくつかのルートがあり、それぞれ表情が異なります。

歩く距離や体力に合わせてルートを選び、その途中で郷土寿司を味わう。そんな旅の組み立て方は、熊野ならではです。

持ち運びと食べる場所のマナー

古道の中で食事をとるときは、次のような点に気をつけたいものです。

古道は、観光地であると同時に、今も祈りの道として大切にされています。食事を楽しみつつ、自然と土地への敬意を忘れないことが大切です。

食べ物の傷みやすさに注意

寿司は、気温の高い時期には傷みやすい食べ物です。特にさんま寿司のような魚を使った寿司は、購入後できるだけ早く食べるのが基本です。携行する場合は、保冷剤や保冷バッグを活用し、直射日光や高温の車内などを避けるようにしましょう。保存の目安や持ち歩きの可否については、購入時に店のスタッフに確認するのが確実です。

季節ごとの楽しみ方

春:新緑と芽吹きの古道歩き

春の熊野は、山の木々が一斉に芽吹き、古道の空気が明るくなる季節です。気温も歩きやすく、めはり寿司を携えての古道歩きには好適です。山の緑を眺めながら、葉に包まれた寿司を頬張る体験は、素朴ながら印象に残ります。

夏:水辺と火の祭りの季節

夏の熊野は、暑さと湿度、そして雨の多さが特徴です。古道を歩く場合は、水分補給と暑さ対策をしっかりと行いましょう。この時期は食べ物が傷みやすいため、寿司は購入後すぐに食べる、あるいは食堂で食べるのが安心です。夏の夜を彩る那智の火祭りのように、熊野には歴史ある祭礼も数多くあります。祭りの空気に触れたあとに、地元の郷土寿司を味わうのも、よい思い出になります。

秋:さんまの季節と紅葉

秋は、さんま寿司がもっとも話題になる季節です。熊野灘に秋刀魚が回遊してくるこの時期は、地元でも「さんまの季節」という意識が強まります。古道の木々が色づくころでもあり、歩く旅にも適しています。さんま寿司を目的に熊野を訪れるなら、この季節は有力な候補です。

冬:温暖な海辺と山の静けさ

冬の熊野は、海沿いでは比較的温暖ですが、山間部は朝晩に冷え込みます。人出が落ち着き、静かな雰囲気の中で神社や古道を巡れるのが魅力です。冬は、塩漬けの高菜を使うめはり寿司が、保存食としての本来の姿を思い出させてくれる季節でもあります。温かい汁物と一緒に食べると、体にしみわたります。冬の夜に火を使う「御燈祭り」のように、この時期ならではの神事もあります。

郷土寿司とあわせて味わいたい熊野の味

海の幸:港町の魚介

熊野灘に面した港町では、新鮮な魚介類が楽しめます。特に那智勝浦は、マグロの水揚げで知られる町です。港の周辺には、地元で獲れた魚を味わえる飲食店が並び、郷土寿司と並べて食べ比べる楽しみもあります。

山の幸:果樹と薬味

熊野周辺の山あいでは、柑橘類をはじめとした果樹が栽培されています。北山村の特産として知られる「じゃばら」のような個性的な柑橘もあります。酢の物や調味料、飲み物など、さまざまな形で熊野の食卓に登場します。さんま寿司の酢飯に柑橘の風味を感じる店があれば、それも土地ならではの味です。

梅と紀州の食文化

和歌山といえば梅を思い浮かべる方も多いでしょう。熊野エリアでも、梅干しや梅を使った加工品を目にすることがあります。梅は、おにぎりやお弁当の定番でもあり、めはり寿司と一緒に味わうと、塩気と酸味の組み合わせの奥深さがわかります。

和歌山の茶粥

和歌山県では、お茶で炊いた「茶粥」が古くから親しまれてきました。さらりとした口当たりで、朝食や軽食に向いています。熊野の宿や食堂で、郷土寿司と茶粥が一緒に出てくることもあるので、メニューを見るときにはぜひ探してみてください。

温泉とあわせた楽しみ

熊野には、古くから湯治や参詣の疲れを癒やした温泉が点在しています。湯の峰温泉は、熊野詣の湯垢離の場として知られ、世界遺産の一部にも含まれています。参詣の前後に温泉につかり、郷土寿司を味わう。そんな旅の時間の過ごし方は、昔の旅人とも共通しています。

郷土寿司とあわせて巡りたい周辺の見どころ

熊野本宮大社と大斎原

熊野古道の終着点のひとつである熊野本宮大社は、熊野信仰の中心的存在です。かつて本宮があった中州の大斎原には、大きな鳥居が立ち、熊野川の流れを背景に厳かな雰囲気が漂います。古道歩きのゴールとして、また寿司を味わった後の散策先として、多くの旅人が訪れます。

熊野那智大社・青岸渡寺・那智の滝

那智山の中腹には、熊野那智大社と青岸渡寺が隣り合うように立っています。さらに、一段で流れ落ちる滝としては国内でも屈指の落差を誇る那智の滝が、飛瀧神社のご神体として祀られています。滝と社寺、そして山の緑が一体となった景色は、熊野を代表する風景のひとつです。大門坂の石畳を歩いて参拝し、その後に食事をとる流れも人気です。

熊野速玉大社と神倉神社

新宮市には、熊野速玉大社と、その摂社である神倉神社があります。神倉神社のゴトビキ岩は、熊野信仰の原点のひとつともいわれる巨岩で、急な石段を登った先にあります。新宮はさんま寿司の名店が点在する町としても知られ、参拝と食事を一緒に楽しめるエリアです。

勝浦の港と温泉

那智勝浦には、漁港と温泉街が共存する独特の雰囲気があります。朝の港の活気や、海を眺めながらの温泉は、山の古道歩きとは違った魅力を持っています。海の幸を味わった後に、さんま寿司をお土産に選ぶのもよいでしょう。

海岸の景勝地

熊野エリアの海岸線には、奇岩や断崖、入り江などの景勝地が点在しています。山の古道と海の景色を一度の旅で楽しめるのが、熊野の大きな魅力です。まさに「山の恵み」と「海の恵み」の両方を、食だけでなく景色でも体感できます。

アクセスの考え方

広い熊野は移動計画が大切

熊野は、思っている以上に広いエリアです。熊野本宮、那智、新宮の三山は、それぞれ距離があり、移動に時間がかかります。公共交通機関は本数が限られる区間も多く、事前の計画が欠かせません。

鉄道とバスで巡る場合

那智勝浦や新宮へは、JR紀勢本線を使ったアクセスが一般的です。そこから熊野本宮方面や那智山方面へは、路線バスを利用します。バスの時刻は季節や曜日によって異なることがあるため、最新の運行情報を事前に確認しておくと安心です。

車で巡る場合

車で巡れば、時間の自由度が高く、寿司を買ってから好きな場所で食べるといった旅のスタイルも取りやすくなります。ただし、山間部の道は細く、カーブが多い区間もあります。余裕をもったスケジュールで、安全運転を心がけましょう。

空港や都市部からのアプローチ

最寄りの空港や、大阪・名古屋といった都市部から熊野までは、距離があり、移動に半日がかかることも珍しくありません。初めて訪れる場合は、移動時間を多めに見積もるのが無難です。宿泊を組み込んで、ゆったりとした日程を組むのがおすすめです。

旅のモデルプラン

日帰りで楽しむ:那智を中心にした半日散策

短い時間でも、熊野の信仰・景色・食を一度に体験できる、初心者向けのプランです。

1泊2日:三山と二つの寿司を巡る

1日目

2日目

三山を巡りながら、山の寿司と海の寿司を両方味わえる、満足度の高い行程です。

古道歩き中心:食をエネルギーにする旅

歩く旅では、携行食としてのめはり寿司が昔と同じ役割を果たします。夕食には海の幸を選ぶと、山と海のバランスがとれた一日になります。

自宅で楽しむ、お土産にする

めはり寿司を家で再現するなら

めはり寿司は、家庭でも比較的作りやすい料理です。基本のつくり方は、次のとおりです。

1. 塩漬けの高菜の葉を用意し、塩気が強い場合は軽く水にさらして塩抜きする
2. 水気をしっかりと切って、葉を広げる
3. 温かいご飯を適量とり、おにぎりの形に握る
4. 高菜の葉でご飯をしっかりと包む

ご飯に具を混ぜる、中に具を入れるなど、お好みでアレンジできます。市販の高菜漬けでも代用できますが、塩気や酸味の強さは商品によって異なるため、味を見ながら調整してください。

さんま寿司は店で買うのがおすすめ

さんま寿司は、魚の処理や酢締めに技術が必要なため、家庭で一から作るのはやや難しい料理です。熊野を訪れた際に、専門の店でお土産として購入し、持ち帰って味わうのが現実的です。

お土産選びのポイント

郷土の味を「持ち帰る」ということ

郷土寿司は、旅の記憶を味として持ち帰れるお土産です。帰宅してから包みを開けると、古道の空気や港町の風景がよみがえります。大切な人への贈り物として選んでも、熊野の物語が一緒に伝わります。

よくある質問

Q. めはり寿司とさんま寿司は、どこで食べられますか?

地元の食堂や飲食店、道の駅、土産物店などで出会えます。店によって扱う時期や数量は異なるため、訪問前に確認しておくと安心です。

Q. どちらか一つだけ選ぶなら、どちらがおすすめですか?

古道歩きや軽食を楽しみたいならめはり寿司、食事としてしっかり味わいたい、あるいはお土産に選びたいならさんま寿司が向いています。ただ、せっかくの熊野旅ですから、ぜひ両方を味わってみてください。

Q. 魚が苦手でも楽しめますか?

めはり寿司は、高菜とご飯を中心にした料理なので、魚が苦手な方にも向いています。ただし、具材や味付けは店によって異なるため、材料や食材アレルギーについては、注文の際に店のスタッフへ確認してください。

Q. 小さな子どもや高齢の方でも食べられますか?

めはり寿司は大きめなので、食べやすい大きさに切ってもらえるか相談してみるとよいでしょう。さんま寿司は、酢の風味や骨の有無などに配慮して、無理のない範囲で楽しんでください。

Q. 古道歩きにそのまま持っていけますか?

持ち歩きは可能な場合が多いですが、傷みやすさや気温を考慮する必要があります。特に夏は注意が必要で、購入した店に携行時間の目安を聞いておくと安心です。

Q. いちばんおいしい季節はいつですか?

さんま寿司は、秋刀魚が南下してくる秋から冬にかけてが話題になる季節です。めはり寿司は、通年楽しめる店が多いですが、どの季節に何が提供されるかは店によって異なります。

Q. 食べ歩きのマナーで気をつけることは?

神社や古道では、ゴミを必ず持ち帰ること、飲食が禁じられている場所では食べないこと、他の人の迷惑にならない場所を選ぶことが大切です。祈りの場でもあることを意識しましょう。

Q. めはり寿司は魚介類を高菜の葉で包んだ料理ですか?

いいえ。めはり寿司はご飯(おにぎり)を塩漬けの高菜の葉で包んだ料理で、魚介類は使いません。海の幸を使うのは、秋刀魚を酢で締めてご飯にのせた「さんま寿司」のほうです。

Q. めはり寿司の名前の由来は?

大きなめはり寿司を頬張るときに「目を見張る」ことから名付けられたと言われています。かつては山仕事や熊野詣の携行食として親しまれてきました。

Q. めはり寿司はどこで食べられますか?

熊野エリア(新宮・本宮・那智勝浦など)の飲食店や道の駅などで広く提供されています。提供の有無や内容は店舗・時期により異なるため、現地で確かめながら出会うのも旅の楽しみです。

まとめ:一口に込められた、熊野の物語

めはり寿司とさんま寿司は、単なる名物グルメではありません。山と海に囲まれた熊野の暮らしの中で、人々が知恵を絞り、旅人を支え、祭りを彩ってきた食文化の結晶です。

塩漬けの高菜の葉に包まれたご飯のひと口には、山仕事の人々や巡礼の旅人の姿が重なります。酢で締めた秋刀魚をのせた寿司のひと切れには、熊野灘の恵みと、家族が集うハレの日の記憶が宿っています。

熊野古道を歩き、神社に手を合わせ、温泉で疲れを癒やす。その旅の合間に、この二つの寿司を味わうことで、熊野という土地がぐっと近く感じられるはずです。ぜひ次の熊野旅では、山の恵みと海の恵みの両方を、ご自身の舌で確かめてみてください。


画像: 和歌山フォトライブラリー(和歌山フォトライブラリー より引用)

めはり寿司は「魚介類を高菜の葉で包んだ料理」?クイズの答え

ご当地検定やクイズでよく出る「めはり寿司は魚介類を高菜の葉で包んだ和歌山県の郷土料理である。○か×か」という問題。答えは×です。

めはり寿司は、高菜の浅漬けの葉でご飯(麦飯や白飯)を包んだ郷土料理で、魚介類は使いません。目を見張るほど大きな口を開けて食べることが名前の由来とされ、和歌山県・三重県にまたがる熊野地方の山仕事や農作業の弁当として親しまれてきました。

魚を使うのは同じ熊野名物のさんま寿司のほう。姿寿司に仕立てたさんまの酢じめをご飯にのせた押し寿司で、めはり寿司とセットで味わうのが熊野流です。