和歌山フォトライブラリー

花の窟神社のお綱かけとは

熊野古道の伊勢路沿い、三重県熊野市の海沿いに鎮座する花の窟神社。社殿をもたず、天に向かってそびえる巨大な岩壁そのものが御神体です。祀られているのは、日本神話で国生みの神とされる伊弉冉尊(いざなみのみこと)。世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の構成資産のひとつでもあります。

この岩壁に大きな綱を架けわたす神事が、花の窟神社のお綱かけです。毎年2月と10月に行われる例大祭の中心行事で、境内に立つと、岩の上から参道側へ長く綱が渡される光景に思わず足が止まります。

綱に込められた意味

季節の花と「花の窟」の名前

お綱には、季節の花や扇などの飾りが結ばれます。花の窟という名は、古い書物に「花の時には花をもって祭る」と記されることに通じるといわれます。自然の恵みを神さまに捧げる気持ちが、いまも形を変えて受け継がれているのです。

地域の人々が受け継ぐ神事

綱は、地元の人々が手をかけて準備を進め、参列者の見守るなかで引き上げられていきます。観光イベントというより、土地の祈りの延長にある神事です。その空気を感じながら立ち会うと、熊野が「よみがえりの地」と呼ばれてきた理由が少し分かる気がします。

見学前に知っておきたいこと

神事のない日の花の窟も魅力的

お綱かけの日でなくても、静かな境内で岩を仰ぐだけで十分に心が整います。すぐ近くには七里御浜の海が広がり、石を拾う参拝者の姿が見られることもあります。海と岩、そして古い信仰が重なる景色は、紀伊半島の東側ならではのものです。

熊野の旅にどう組み込む?

花の窟神社は、熊野三山とは少し離れた熊野市側にあります。三山めぐりと組み合わせるなら、移動時間に余裕をもたせた日程を組むのがおすすめです。伊勢路の古道歩きと合わせて、神話の時代から続く熊野の奥行きを味わってみてください。

岩に架かる一本の綱は、人と自然、そして神さまをつなぐ祈りのしるし。熊野の旅の中で、ぜひ一度その空気に触れてみてください。


画像: 和歌山フォトライブラリー(和歌山フォトライブラリー より引用)