湯の峰温泉は、熊野本宮大社の近く、山あいの谷にひっそりと開けた小さな温泉地です。派手な設備や大きな歓楽街はありません。そのかわり、立ちのぼる湯けむりと硫黄の香り、川沿いに寄り添う家々の佇まいに、長い時間を重ねてきた湯治場ならではの深みがあります。
このガイドでは、温泉としての魅力に加え、熊野詣という巡礼文化のなかでこの湯が担ってきた役割にも触れます。つぼ湯や湯筒の楽しみ方、大日越で熊野本宮大社へ歩く方法、季節ごとの表情、旅のモデルプランまで、湯の峰を訪ねる前に知っておくと旅が深まる内容をまとめました。
熊野詣の湯垢離場として栄えた温泉地
湯の峰温泉は、熊野本宮大社から車で10分ほど山あいに入った小さな温泉集落です。約1800年前に発見されたと伝えられる古湯で、かつて熊野へ参詣する人々が旅の穢れを落とす「湯垢離(ゆごり)」の場として利用してきました。谷筋に旅館や共同浴場が肩を寄せ合うように並び、川からは湯けむりが立ちのぼる、素朴ながらも独特の湯治場らしい雰囲気が漂います。
「湯垢離」とは何か
湯垢離は、神仏の前に出る前に身を清める「垢離(こり)」の一種です。海や川の水を浴びて清める「水垢離」が広く知られていますが、熊野では温泉が湧く土地柄から、湯で身を清める湯垢離が行われてきました。長い道のりを歩いてきた巡礼者にとって、湯の峰の湯は体の疲れを癒やす湯治であると同時に、心身を整えて聖地へ向かうための儀礼でもありました。
現代の私たちが「温泉に入ってから参拝する」というとき、それは単なる順序の問題ではありません。湯に浸かる時間を、本宮へ向かう前の準備として意識してみると、湯の峰での過ごし方が少し変わってきます。
谷あいに集落が育った理由
湯の峰は、山に囲まれた谷底に湯が湧く地形のなかにあります。川沿いのわずかな平地に建物が集まっているため、集落全体がひとつの大きな湯屋のような一体感を持っています。歩いて回れるほどの規模なので、宿、共同浴場、源泉、寺社が徒歩圏内に収まっているのも魅力です。
観光地として整えられすぎていないぶん、朝夕には生活の気配がそのまま残ります。湯けむりの向こうで洗濯物が揺れ、宿の前を人が掃き清める。そんな日常と巡礼の記憶が重なる光景が、この温泉地の個性です。
熊野の温泉地としての位置づけ
熊野本宮周辺には、湯の峰のほかに川湯温泉、渡瀬温泉があり、あわせて「熊野三湯」と呼ばれることがあります。川湯温泉は大塔川の河原を掘って楽しむ温泉文化で知られ、渡瀬温泉は静かな山里の湯です。三つの温泉は距離が近いのに表情が大きく異なります。そのなかで湯の峰は、歴史の古さと巡礼との結びつきの強さで際立った存在です。
熊野詣と湯の峰を結ぶ歴史と物語
湯の峰温泉を深く味わうには、熊野詣そのものの歴史を少し知っておくと役立ちます。この温泉は、巡礼という大きな文化の流れのなかに自然に組み込まれてきました。
「蟻の熊野詣」と呼ばれた巡礼の賑わい
熊野は古くから、浄土への入口、あるいは死と再生の地として信仰を集めてきました。平安時代の後半には上皇や貴族による熊野御幸が盛んになり、のちには武士や庶民にも参詣が広がります。その行列の絶え間ない様子は「蟻の熊野詣」という言葉で語られてきました。
熊野三山(熊野本宮大社・熊野速玉大社・熊野那智大社)を巡る道のりは長く、山道も険しいものでした。その途上で湯の峰に立ち寄り、体を温め、身を清める。湯の峰は、巡礼者を支える大切な休息地でもあったのです。
浄不浄を選ばない熊野の懐
熊野信仰の特徴としてよく語られるのが、身分や性別、信心の有無、心身の状態を問わずに受け入れる懐の深さです。鎌倉時代の僧・一遍上人が熊野本宮で啓示を受けたという話は、その象徴的な逸話として知られています。
病を抱えた人や、世間から距離を置かれた人々までもが熊野を目指したといわれ、湯の峰の湯はそうした人々の救いの場にもなりました。湯の峰の「よみがえりの湯」というイメージは、こうした背景と深く結びついています。
小栗判官の蘇生伝説
湯の峰を語るうえで欠かせないのが、小栗判官(おぐりはんがん)の伝説です。中世以降に語り物や芸能として広まった物語で、毒を盛られて命を落とした小栗が、餓鬼阿弥(がきあみ)という姿でこの世によみがえります。恋人の照手姫(てるてひめ)が、その土車を引いて熊野を目指し、湯の峰の湯に浸かることで元の姿を取り戻す、という筋立てです。
物語の細部は伝承によって異なりますが、「死にかけた者が湯によって再生する」という核は共通しています。つぼ湯の小さな湯小屋に身を沈めるとき、この物語を思い出すと、湯の温度や香りがいっそう意味を持って感じられるでしょう。
世界遺産に登録された「つぼ湯」
湯の峰温泉のシンボルといえば、川べりの小屋にひっそりと佇む「つぼ湯」。世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の構成資産のひとつで、温泉としては世界的にも珍しい登録例です。二人も入ればいっぱいになる小さな岩風呂で、時間帯によって湯の色が変化するといわれ、貸切制で順番に入浴します。小栗判官が蘇生したという伝説も残り、まさに「よみがえりの湯」を体感できる場所です。
小さな湯船だからこそ得られる体験
つぼ湯の最大の特徴は、その小ささにあります。岩をくり抜いたような湯船に、湯小屋が覆いかぶさるように建っています。大浴場のような開放感はありませんが、そのぶん湯と自分との距離がとても近くなります。
貸切制のため、同行者以外を気にせず入れるのも魅力です。湯面の揺れや硫黄の香り、小屋に差し込む光の変化に意識が向き、静かな時間が流れます。慌ただしく入るより、旅程に余裕を持たせて臨むのがおすすめです。
湯の色の変化を楽しむ
つぼ湯の湯は、時間帯によって色合いが変わるといわれています。透明感のある湯に見えるときもあれば、白みや青みを帯びて見えることもあるとされます。これは湯に含まれる成分や光の入り方、湯の状態などが関係していると考えられますが、実際の色は日や時間によって異なります。
「必ず見られる」と期待しすぎず、その日の湯の表情をそのまま受け止めるくらいが、ちょうどよい楽しみ方です。
泉質と湯の特徴
湯の峰温泉は、硫黄の香りをもつ単純硫黄泉として知られています。肌あたりはやわらかく、浸かるとしっとりした感触が残るといわれます。湯治場として長く親しまれてきた背景には、こうした湯の性質があります。
硫黄泉の湯は、銀製のアクセサリーなどを変色させることがあります。入浴前に外しておくと安心です。長湯をすると湯あたりすることもあるため、無理せず休憩を挟みながら入りましょう。
入浴前に知っておきたい心構え
つぼ湯は世界遺産の構成資産であり、地域の人々が守り続けてきた湯でもあります。受付の方法や入浴できる時間、利用の決まりは現地の案内に従ってください。ここでは事前に確認すべき内容を細かく書きませんが、以下の点は共通する配慮として心にとめておくと安心です。
- 小さな湯船なので、周囲の人への配慮を忘れず、譲り合って利用する
- 湯は非常に熱い場合があるため、様子を見ながらゆっくり入る
- 写真撮影は、場の雰囲気と他の利用者への配慮を最優先にする
- 体調がすぐれないときは無理をしない
共同浴場で湯の峰の湯に親しむ
つぼ湯のほかにも、湯の峰には地域の人々が親しんできた共同浴場があります。旅館に泊まれば宿の湯を楽しめますし、日帰りで訪れる場合も、共同浴場の湯で温泉街の空気に溶け込めます。つぼ湯が「儀礼的・象徴的な湯」だとすれば、共同浴場の湯は「暮らしのなかの湯」です。両方を味わうことで、湯の峰の奥行きが見えてきます。
温泉玉子が作れる「湯筒」
集落の中央を流れる川沿いには、高温の源泉が湧き出す「湯筒」があります。売店で購入した卵や野菜を網袋に入れて浸しておけば、ほくほくの温泉玉子ができあがり。旅の途中の小さな楽しみとして、ぜひ体験してみてください。硫黄の香りに包まれながら、湯気の立つ川辺で待つ時間そのものが旅の思い出になります。
湯筒体験を楽しむコツ
温泉玉子づくりは、時間をゆっくり使う体験です。待ち時間を「何もしない時間」と捉えず、川の音や湯けむりの流れ、周囲の人の様子を眺める時間として味わってみてください。
- 待ち時間の目安は、売店で購入時に確認すると安心
- 源泉は非常に高温のため、湯に近づきすぎない
- 小さな子ども連れの場合は、手を湯に近づけないよう目を離さない
- 取り出した直後の玉子は熱いので、少し置いてから殻をむく
地元で採れた野菜などを湯に浸けて食べるのも、温泉地ならではの楽しみ方です。素材の味がシンプルに引き立ち、自然の熱だけで調理したという実感が味わえます。
湯の花と源泉の恵み
湯の峰では、湯から採れる「湯の花」が土産として親しまれています。湯の花は、温泉成分が結晶化したもので、自宅の風呂に入れると湯の峰の香りを少しだけ再現できます。旅の余韻を持ち帰るのにちょうどよい土産です。
東光寺と薬師如来
湯の峰には、薬師如来を祀る東光寺があります。薬師如来は病を癒やす仏として信仰されてきました。薬効のある湯が湧くこの土地と、薬師信仰が結びつくのは自然な流れだったのでしょう。
湯の峰を歩く際は、湯に入るだけで終わらず、こうした寺社にも足を運んでみてください。湯と信仰が分かちがたく結びついてきた土地であることが、実感として伝わってきます。
湯の峰温泉を歩いて味わう
湯の峰は小さな集落なので、ゆっくり歩いても短時間で一周できます。ただし、見どころを巡るだけでは魅力の半分も味わえません。立ち止まって観察すると、この土地ならではの発見があります。
川沿いを歩く
集落の中心を流れる川に沿って歩くと、湯けむりが立ちのぼる場所、湯の流れ込む場所、川面に映る建物の影など、細かな風景の変化に気づきます。川の水と温泉の湯が混ざり合う一帯は、湯の峰ならではの景色です。
路地と石段を歩く
旅館の間を抜ける細い路地や、寺社へ続く石段にも味わいがあります。古い建物の佇まいや、手入れの行き届いた軒先の花など、観光案内には載らない小さな見どころが点在しています。
朝と夕方の過ごし方
日帰りだと昼間だけの滞在になりがちですが、朝や夕方の湯の峰は、昼間とは違う落ち着きがあります。朝は湯けむりが澄んだ空気のなかで際立ち、夕方は山あいの陰影が深まって、湯治場らしい情緒が増します。宿泊できる場合は、朝の散歩もぜひ組み込んでください。
大日越で熊野本宮大社へ
湯の峰温泉から熊野本宮大社へは、「大日越(だいにちごえ)」と呼ばれる山越えの参詣道が続いています。距離はおよそ2km、標高差は約200mと短いながらも急坂が多く、道中には鼻欠地蔵や月見ヶ丘神社などの史跡が点在します。
歩くときのポイント
- 所要時間はゆっくり歩いて1時間半ほど
- 足元はトレッキングシューズ推奨
- 湯の峰で身を清めてから本宮へ向かう順路がおすすめ
大日越が持つ意味
大日越は、熊野古道・中辺路(なかへち)に連なる道の一部として、湯の峰と本宮を結んできました。湯垢離で身を清めた巡礼者が、山を越えて本宮へ向かう。その流れを、現代の私たちも同じ道で追体験できるのが大日越の魅力です。
距離が短いだけに、気軽に挑戦できる古道として人気があります。ただし、気軽さに比べて登り下りの負荷は小さくありません。「短いから大丈夫」と油断せず、準備を整えて臨みましょう。
道中の見どころ
道中には、巡礼者を見守ってきた史跡が点在しています。鼻欠地蔵は、名前のとおり独特の姿で知られ、素朴な信仰の名残を感じさせます。月見ヶ丘神社は、静かな高台にあり、道中のひと休みに向いた場所です。
こうした史跡は、解説板を読み、少し立ち止まって眺めるだけでも味わいが深まります。急ぎ足で通り過ぎるのではなく、かつて同じ道を歩いた人々の気持ちに思いを馳せてみてください。
急坂を歩くための準備
古道歩きでは、装備と準備が快適さを左右します。基本的な心得を挙げます。
- 履き慣れたトレッキングシューズや、グリップ力のある靴を選ぶ
- 雨具を携帯し、天候の変化に備える
- 飲み物を携行する。山中では自動販売機がないことも多い
- 滑りやすい石畳や落ち葉の上は、歩幅を小さくして慎重に歩く
- 日没が早い季節は、明るい時間に歩き終えられる計画を立てる
- 虫よけ対策や、夏場は日よけ対策も忘れない
体力に不安がある場合は、無理に全行程を歩く必要はありません。古道の一部だけ歩いて引き返す、あるいは車やバスで移動して要所のみ歩く、といった柔軟な選択も十分に価値があります。
湯の峰から本宮へ、本宮から湯の峰へ
おすすめしたい順路は、湯の峰で身を清めてから本宮へ向かう流れです。湯垢離の意味を考えると、この向きがもっとも自然です。一方で、本宮に参拝してから大日越を歩いて湯の峰へ戻り、湯で疲れを癒やすという順路にも合理性があります。
どちらを選ぶかは、宿泊地、移動手段、体力、その日の天候などで決めてかまいません。ただし、歩き終えたあとに湯に浸かる心地よさは格別です。体力に自信がある方は、後者の順路も検討してみてください。
本宮に着いたら
大日越を歩き終えて熊野本宮大社に参拝すると、山道の記憶と参拝の感慨が重なります。本宮は、熊野十二所権現を祀り、熊野信仰の中心のひとつとして知られる社です。八咫烏(やたがらす)の信仰とも結びつき、神使として烏が親しまれています。
参道の石段を上りきり、社殿の前に立つとき、湯の峰の湯に浸かり、山を越えて辿り着いた自分の足取りを振り返ってみてください。熊野詣を体感するという意味が、実感として深まるはずです。
季節ごとの湯の峰の楽しみ方
湯の峰は一年を通して訪れる価値のある温泉地ですが、季節によって魅力が変わります。自分の旅のスタイルに合わせて選んでください。
春:新緑と山の気配
春は山の木々が芽吹き、谷全体が明るい緑に包まれる季節です。古道歩きにも向いた気候で、大日越の山道を歩くには比較的快適な時期とされます。ただし、天気が変わりやすいこともあるため、雨具は忘れずに持参してください。
夏:深い緑と川の涼
夏は緑が濃くなり、山あいの涼しさが感じられます。一方、古道歩きでは暑さや湿気、虫への対策が欠かせません。熱い温泉に入るのは汗をかく夏こそ向いている、という考え方もあります。水分補給を意識し、朝の涼しい時間帯に歩く計画がおすすめです。
秋:紅葉と澄んだ空気
秋は空気が澄み、山々が色づく季節です。夕暮れが早くなるため、古道歩きの時間管理がより大切になります。湯上がりに感じる風の涼しさも、この季節ならではの楽しみです。
冬:湯けむりが映える季節
冬は気温が下がるぶん、湯けむりがくっきりと立ちのぼり、湯の峰らしい景色がもっとも際立つ季節です。湯に浸かる心地よさも格別で、湯治場の本来の魅力を感じられます。一方、山道は冷え込みや路面の凍結が起きる可能性があるため、防寒と足元の備えを万全にしてください。
湯の峰での宿泊と食の楽しみ
湯の峰を本当に味わうなら、できれば一泊してみてください。湯の峰の夜と朝には、日帰りでは出会えない静けさがあります。
湯治場の宿に泊まる
湯の峰には、湯治の流れを汲む旅館が並びます。宿ごとに規模や雰囲気、料理の傾向は異なりますが、いずれも温泉を中心にした滞在を想定した造りです。予約の際は、食事の内容、入浴方法、つぼ湯の利用についての案内などを事前に確認しておくと安心です。
熊野の食を味わう
熊野周辺では、山の恵みと川の恵みを活かした料理が親しまれています。山菜、川魚、地元の野菜、そして温泉の熱を活かした料理など、素朴ながら滋味深い味わいが特徴です。湯筒で作る温泉玉子も、そうした土地の食文化の入口のひとつといえるでしょう。
名物や郷土料理は宿や飲食店によって異なります。事前に調べすぎず、現地で出会う味を楽しむのも旅の醍醐味です。
夜の湯の峰
夜になると、昼の賑わいが静まり、谷に湯の音と川の音だけが残ります。湯上がりに外へ出て、湯けむりと静寂を味わうのも、湯治場ならではの贅沢です。足元が暗くなるため、懐中電灯の用意や、宿の人の案内を守った散策を心がけましょう。
湯の峰温泉へのアクセスの考え方
具体的なダイヤや所要時間は変わる可能性があるため、ここではアクセスの一般的な考え方を整理します。最新の情報は、交通事業者や観光案内所で必ず確認してください。
車で訪れる場合
熊野本宮大社から車で10分ほどという近さなので、本宮周辺を拠点に車で動く旅と相性がよい温泉地です。山道が多く、カーブも続くため、運転には余裕を持ち、日没後や悪天候の移動には特に注意してください。
公共交通機関で訪れる場合
熊野エリアは広く、鉄道駅から目的地まで路線バスを乗り継ぐ旅になることが多いです。バスの本数は限られる場合があるため、事前の確認と余裕のある計画が欠かせません。湯の峰に泊まる計画なら、宿の送迎や周辺の交通について、予約時に尋ねてみると安心です。
熊野古道歩きと組み合わせる場合
大日越を歩く予定があるなら、歩く方向と、スタート地点へ戻る手段を事前に決めておきましょう。片道歩きの場合は、歩き終えた地点から宿泊地へ戻る方法を確保しておくことが大切です。
湯の峰と一緒に訪ねたい周辺の見どころ
湯の峰を拠点に、熊野本宮周辺には見どころが数多くあります。
熊野本宮大社
熊野三山のひとつで、熊野信仰の中心のひとつです。参道の石段を上り、社殿でお参りする時間は、熊野詣の核心ともいえます。大日越を歩いて到着するルートで訪れると、感慨が深まります。
大斎原(おおゆのはら)
熊野本宮大社のかつての社地とされる場所で、広々とした空間に大きな鳥居が立っています。川の氾濫で社殿が移された歴史を持つ土地で、静かで雄大な空気が漂います。本宮参拝とあわせて訪れたい場所です。
川湯温泉
熊野三湯のひとつで、大塔川の河原を活用した温泉文化で知られます。湯の峰とは雰囲気が異なるため、湯めぐりを楽しみたい方におすすめです。
熊野古道のほかのルート
熊野古道には、大日越以外にも多くの道があります。本宮周辺にも複数の参詣道が通っており、体力や日程に応じて選ぶことができます。計画の際は、歩く距離と標高差、アクセス、歩行時間を事前に確認し、無理のない行程を組みましょう。
旅のモデルプラン
宿泊日数や体力、同行者に合わせた、三つのモデルプランを提案します。具体的な時刻は書かず、流れだけを示します。
日帰りで湯の峰を味わうプラン
1. 午前中に湯の峰に到着し、集落を散策
2. 湯筒で温泉玉子を作りながら、湯けむりの風景を楽しむ
3. つぼ湯や共同浴場の湯を体験
4. 昼食をとり、東光寺など集落内の史跡を巡る
5. 時間と体力に余裕があれば、車で熊野本宮大社へ移動して参拝
一泊二日で湯垢離と大日越を体験するプラン
1. 一日目:湯の峰に到着し、散策と温泉玉子づくりを楽しむ
2. 宿でゆっくり入浴し、夜は静かな湯治場の雰囲気を味わう
3. 二日目:朝の湯の峰を歩き、湯垢離の気持ちで朝の湯に浸かる
4. 身支度を整えて大日越へ出発し、史跡を見ながら本宮へ
5. 熊野本宮大社に参拝し、大斎原も訪ねる
6. 帰路に向かう
二泊三日でゆったり熊野を味わうプラン
1. 一日目:湯の峰に到着し、集落と湯を楽しむ
2. 二日目:大日越で本宮へ。参拝のあと、川湯温泉など周辺の湯へ
3. 夜は再び湯の峰か周辺の宿でゆっくり休む
4. 三日目:気になる古道を少し歩く、あるいは周辺の見どころを巡って帰路へ
よくある質問
Q. 湯垢離(ゆごり)とは何ですか?
湯垢離とは、熊野本宮大社へ参拝する前に温泉に浸かり、心身を清める儀式のことです。湯の峰温泉は古くから熊野詣の湯垢離場として栄え、巡礼者はここで長旅の疲れを癒やし、身を清めてから本宮へ向かいました。今も湯の峰の湯に浸かることは、この伝統を追体験することにつながります。
Q. つぼ湯の料金や利用方法は?
つぼ湯は公衆浴場の受付で申し込み、貸切の交代制で利用します。人気が高く、混雑する時期には待ち時間が出ることもあります。料金や利用時間は変更されることがあるため、最新情報は熊野本宮観光協会や現地の案内でご確認ください。
Q. つぼ湯は誰でも入れますか?
つぼ湯は、世界遺産の構成資産でありながら、実際に入浴できる湯として親しまれています。利用の決まりや受付の方法、利用できる時間などは、現地の案内に従ってください。体調や年齢などで不安がある場合は、事前に確認することをおすすめします。
Q. 大日越は初心者でも歩けますか?
距離は短いものの、急坂が多い山道です。ふだん運動をしない方でも歩けますが、ゆっくり進み、休憩をこまめに取ることが大切です。足元の装備と飲み物、雨具を準備し、天候や体調に不安があるときは無理をしないでください。
Q. 湯筒の温泉玉子は子どもでも楽しめますか?
楽しめますが、源泉は非常に高温です。必ず大人がそばについて、湯に近づきすぎないよう注意してください。取り出した玉子や網袋も熱くなっているので、扱いにも気をつけましょう。
Q. 日帰りでも楽しめますか?
日帰りでも湯筒体験、共同浴場、集落散策などを楽しめます。ただし、湯治場の空気をじっくり味わうなら、一泊するのがおすすめです。朝夕の静けさや、湯に浸かる時間の余裕がまったく違ってきます。
Q. 雨の日はどう過ごせばよいですか?
雨の日の湯の峰は、湯けむりがしっとりと立ちのぼり、湯に浸かる心地よさが増すといわれます。古道歩きは足元が滑りやすくなるため、無理せず温泉中心の旅に切り替える判断も大切です。
Q. 持ち物で特に気をつけることはありますか?
湯上がり用のタオル、着替え、防寒具、雨具、歩きやすい靴は基本です。古道を歩く場合は、飲み物と、歩行中にこまめにとれる軽食があると安心です。銀製のアクセサリーは硫黄泉で変色することがあるため、入浴時は外しておきましょう。
湯の峰を訪れる前に知っておきたい心得
湯の峰は観光地であると同時に、人々の暮らしや信仰が息づく場所です。気持ちよく訪れるために、いくつかの心得を挙げておきます。
- 集落は生活の場であり、静かに歩く
- 湯や川を汚さないよう、ゴミは持ち帰る
- 寺社や史跡では、手を合わせ、場の雰囲気を尊重する
- 古道では、他の歩行者へのあいさつと譲り合いを心がける
- 営業状況や入浴の決まりは、現地の案内を優先する
こうした小さな配慮が、湯の峰の静かな空気を守り、次に訪れる人にもその良さを手渡すことにつながります。
まとめ:湯の峰は熊野詣の入口
湯の峰温泉は、単なる立ち寄り湯ではなく、熊野詣を体感するための大切な入口です。約1800年という長い時間のなかで、巡礼者の疲れを癒やし、身を清め、ときに命をよみがえらせてきた湯が、いまも変わらず湧き続けています。
つぼ湯の小さな湯船に身を沈め、湯筒で温泉玉子を作りながら湯けむりを眺め、大日越で本宮へ向かう。その一連の流れのなかで、私たちは、かつての参詣者と同じ時間の流れに少しだけ触れることができます。
温泉で心身を整えたあとに、いにしえの参詣者と同じ道を辿って本宮大社に参拝する。急がず、無理をせず、湯と道が育んできた物語に耳を傾けながら、あなた自身の熊野詣を始めてみてください。
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画像: Kumano Kodo pilgrimage route Yunomine Onsen World heritage 熊野古道 湯の峰温泉20 / 撮影: Nekosuki / CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons より引用)
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