熊野本宮大社

熊野本宮大社のご利益は「神さまが一柱ではない」ところから

「熊野本宮大社のご利益は何ですか?」とよく聞かれます。まず知っておきたいのは、本宮の社殿には複数の神さまがお祀りされていることです。主祭神は家津美御子大神(けつみみこのおおかみ)で、証誠殿(しょうじょうでん)にお祀りされています。お願いごとを一つに絞る前に、「どなたの前で手を合わせるのか」を知っておくと、参拝の時間がぐっと落ち着いたものになります。

本宮は、全国に数多くある熊野神社の総本宮とされています。2004年には「紀伊山地の霊場と参詣道」の一部として世界遺産に登録されました。その長い歴史のなかで、人びとは願いごとだけでなく、道中の無事や、無事に着いたことへの感謝も運んできたのでしょう。

ご利益を「項目」で探しすぎない

縁結び、健康、厄除け、家内安全など、ご利益は一覧にしやすい言葉で語られがちです。ただ、熊野の信仰は神道と仏教が重なり合う「神仏習合」の色合いが濃く、一言で割り切れない奥行きがあります。証誠殿の神さまは、阿弥陀如来と結びついて信仰されてきたとされています。

私たち地元の人間は、「何を叶えてもらうか」より先に、ここまで来られたことへの挨拶をしている人が多い気がします。願いごとは、その後に心のなかでそっと添えるくらいがちょうどいいのです。

社殿の前での手の合わせ方

1. 先に整える

長い石段を上がり、神門をくぐると、静かな社殿の空間が広がります。息が上がっているときは、無理にすぐ参拝せず、少し立ち止まって呼吸を整えましょう。

2. 「自己紹介」から始める

参拝では、住所・氏名と「今日ここへ来られたこと」への感謝を心のなかで伝えると、気持ちが落ち着きます。そのあとに願いごとを一つ、短く添えます。

3. 社殿ごとに慌てない

社殿が並んでいるため、混み合う時間帯は順番を待つことになります。すべてに長く祈ろうとせず、手を合わせる一つひとつを丁寧にするほうが、後から思い出に残ります。参拝の作法の掲示や案内がある場合は、それに従ってください。

参拝のあとの過ごし方

参拝を終えたら、すぐ次の予定へ向かうのではなく、境内で少し腰を下ろしてみてください。杉木立を抜ける風の音を聞いていると、「何をお願いしたか」より「どんな気持ちで手を合わせたか」のほうが残っていることに気づきます。

ご利益を「もらって帰るもの」と考えるより、「歩いてきた道のりそのもの」と受け止めるほうが、熊野らしい参拝になると私は思っています。

参拝前に確かめておきたいこと

熊野本宮大社のご利益は、願いごとの数ではなく、手を合わせる「間」のなかにあります。次に訪れるときは、神さまのお名前を一つ心に留めてから、石段をのぼってみてください。


画像: 熊野本宮大社((公社)和歌山県観光連盟 より引用)